「雲雀さん、約束して下さい」 有り得ない約束 放課後の応接室は、夜の帳が下りたように静かだ 「何を」 雲雀が書類から、つ、と目だけ上げて、綱吉を見上げた 「もし…もし、俺が死んだら」 雲雀の仕事机の前に立った綱吉は、真剣な瞳で 「…」 雲雀は黙って書類を置く 「もし俺が死んだら…俺が死んでも、俺を、」 日も暮れていないというのに、辺りは暗い 「忘れないでほしいんです」 夕闇の中で、何かが割れる、音がした 「…」 「他に好きなひとができてもいい。でも、俺のこと、忘れないでほしいんです」 握りしめてよれたワイシャツ 「わがまま…ですか」 力が入りすぎて小さいカラダがいっそう小さくて 「わがままじゃないけど」 固い音を立てて、雲雀が立ち上がる 「勝手、だとは思うよ」 綱吉の前にやってきて、 人形のように動かなくなってしまった綱吉を見て、 らしくもなくゾッとしながら 「すみません…」 ため息みたいな綱吉の声は、琥珀の瞳に溜った綺麗な泉と共に、こぼれおち 「なに、綱吉、君は」 、ず、に、 彼の手に拾われて 「なに、君は僕に君を守らせてくれないわけ?」 「え」 顔を上げた綱吉の顔は、ひどく情けなく ひどく、可愛い 「好きだよ、綱吉」 好きだ。愛してる。愛しい。誰よりも。君以外何もいらない。世界で一番 全部言ってもいいのだけれど 「守ってあげるよ、綱吉」 だからほら、涙をふいて 「でも俺はマフィアだから…もしかしたら」 「もしかしたらなんて、ないよ」 うってかわってぶっきらぼうな口調 「何があっても、君は死なない」 「いや、それは…」 「いやむしろ死ねない。僕が守るのに、死ぬはずない」 雲雀の左手が、綱吉の目の前に突き出される 闇の中で、雲の証は、誇らしげに光った 「もう一度だけ言うけど…君は僕に、君を守らせてくれないわけ?」 「いえ…っ」 ごし、と手の甲で涙をふく たくさん泣いた後のような顔で、笑って 「どうぞ、めいっぱい、守って下さい」 雲雀は満足そうにうなずいて 「うん。そうする」 綱吉に、手を差し出した インコみたいに首を傾げた綱吉に、微笑みかけて 「帰ろう」 お二人さん、もう日も暮れますよ―― 彼の小鳥がそう鳴いたように聞こえた ――帰ろう。有り得ない約束は、もう止めにして、さ。 終 相変わらずヘタレですみません(俺が)ありがとうございました!(ジャンピング土下座)