レンズの奥




「んー?栄、何考えてんの?」
「…えぇ?」
 じぃ、と見上げてくる可愛い可愛い後輩に、御幸は胡散臭いと評判の笑顔を向けた。
 栄純は一拍遅れて首を傾げる。あ、それも可愛い、と、目の前の狼の機嫌が上向くのも知らずに。
 御幸としては別に、栄純が自分のことを好きだと思ってくれているなんて高望みはしていない。それはただの、拍子抜けするほど都合のいい妄想。
 だけれども、大好きな愛しいこの子が自分の方を凝視していたなら、それで十分なのだ。
(かわいいじゃないか、その程度)
「なぁ」
 楽しげに口角を上げていた御幸に、栄純は何か企んでいそうな顔で言う。大抵くだらない、若しくは荒唐無稽な発言が飛び出す合図に、御幸は片方の眉を上げた。
「俺さ、あんたの目、好きだなって」
 ……。
「は」
「だから、好きだなあって」
 眼鏡のレンズを指先でこんこんノックして、栄純は微笑んだ。







08/03/21