焼肉パーティー




 昔は苦手だった賑やかな場所が好きになったのがいつかはわからない。少なくとも今は周りで騒がしく会話がされていて、自分一人でぽつねんと座っていたとしても、つらくない。
 両手で持ったコップを回すと、茶色い液面が揺れた。まるい油が表面に浮かんでいて、ちょっと食べ過ぎたかとまたおしぼりで口を拭う。白い布地には何も付かない。
 もう少し食べようか、それとももう帰ってしまおうか。
「どう、しよう」
 誰も聞かない言葉は同級生や先輩達の一気飲みの歓声に掻き消される。三橋はぼうっとしていたが、数メートル先から走ってくる彼には一応気付いた。
「三はっ…イタッ!?」
「ふえ」
 三橋は目の前でコケかけた花井を見、瞬きをした。
 花井は転びそうになったものの手の中の紙皿、並びにそれに乗った数枚の肉、は死守しており、三橋は目を輝かせる。
「は、ないくん、スゴい…!」
 よろよろと体勢を立て直しつつそれは違うだろとツッコミたかったが、心配でやって来たのにそれは本末転倒な気もした。
 座ったままの三橋に皿を差し出すと、瞬きされる。
「や、だから…さっきっから食べてないだろ?だから」
「お、俺、に?」
「…ひょっとしてつまんねえんじゃねえかって」
 花井は顔を逸らした。
 大学に入って友達ができているかなんて、聞けない。そんなことを聞かなくてはいけないような間柄ではもうないし、聞いて笑顔で「できた、よ!」と返された日にはちょっとヘコむ。心は安堵し、なのにヘコむ。
 三橋は花井の言葉の意味を考えていたが、彼が気を遣ってくれているのに気付いて謝りそうになった。しかしそれは良くないのだと西浦で叩き込まれたので、寸でのところで止まる。
「ごっ」
「ご?」
「ちが…あの、」
 花井の持ってきた皿を受け取りながら、三橋はにっこり微笑んだ。
「ありがとう、花井くん」
 焼肉を一枚食べて、三橋はおいしい、です、とまた笑った。







08/09/02