3コールで出てください
『そりゃまた何で』
電話の向こうは日本だ。国際電話はいつになっても進歩する気配を見せず、無駄な雑音をBGMに掻き鳴らす。
日本にいる恋人が怪訝そうな言い方をするので、馬鹿なあいつでもわかるように説明してやる。
閃は少し押し黙り、まあいいけどそれだけなら、俺にだってできるし、とらしくもなくつぶやいて、また沈黙。
電話口で困っている姿が想像され、妙に愛しかった。
意地っ張りで鈍感な閃には、いつだって大人な態度でこちらが譲歩しなくてはならない。それだって意味を汲み取ってもらえずスルーされることも多い。
けれど。それでも。何度でも。
倒されたキックボクサーが、這い上がってくるみたいに。
「閃」
『…おう』
「早く、来いよ」
『!…もちろん!』
笑顔の気配をたぐりよせて頷いて、タイの夜空を見上げた。
――3回以上は、俺が待てない。
さびしくて、さ。
08/08/13