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充電中
頑張れよ、と言うその青年の顔は、初めて会ったときと比べると否応なしに大人びていた。
それは彼が過ごした年月と、自分が過ごした年月が長いことを示していて。けれども二人で過ごした日々はそうないことを考えると寂しくもある。
「どうした?」
「別に」
なんでもないと手をひらひら振ると、閃は不思議そうに首を傾げた。子どもっぽいその仕草に安堵するなんて、
なんて。
「にしてもすげーな。最年少で世界に挑戦、だろ?」
「結局俺が先だったな」
わざとらしく鼻で笑うと閃はむっとしたように視線を逸らす。
「ふん!チャンプになって天狗になってるその鼻っ柱、俺が折りにいってやるよ!」
楽しみにしてる。そう言いかけて、閉口する。
そんな言葉では追いかけてくる閃の背を、押すことはできないのだから。
「…ま、できるもんならな」
「できるっつーの!いい気になんなよ!?」
「でも、応援はしてくれるんだな」
つい漏らす。と閃は大きく目を開き、少し考えて青道のそばに寄った。
まだ閃の方が背が低く、少しだけだが見上げるような形になる。
もし抜かれたらどうしよう――そんな危惧は、単にキックボクシングにおいてだけではないのだ。
「同じジム出身なんだ。応援するの、当たり前だろ!」
何の疑いもなく紡がれる言葉はいつも通りまっすぐで、耳に心地良い。
(こういうのを、そう、言うんだな)
「閃」
「え?」
「ありがとう」
抱きしめる。すぐ振り払われるかという覚悟は杞憂に終わって、掻き消えた。
引き締まった身体が服越しにもわかる。脈打つ血液が全身から伝わってくる。
「…なに、して」
「充電」
「……」
そーかよ。
青道はそれを、キスしてもいいという意味に取ることにした。
08/03/21