魚の骨がきれいに取れる




「あら」
 彼女がそう呟いたので、綱吉は何に対してそう言ったのか考えてみた。考えてみて、答えは出なかった。
 ただ彼女がそばにいて、自分がひとりで食事をしているだけだから。
「どうかしたの?ビアンキ」
「意外ね」
 白く長い指が綱吉の前にある皿を指した。
 もうほとんどすっかりその身を剥がれた焼き魚が横たわっている。骨が丁寧に取られ、皿の端に寄せられていた。
 ビアンキは怪しげに口角を上げて、綱吉をまじまじと見つめた。
「貴方は不器用だから、こういうこと上手くできないと思っていたのだけど」
「失礼だなー…まあ、よく言われるんだけどね」
 なんだそんなこと、と言わんばかりに綱吉が苦笑する。
 その疲れたような笑顔には、ま、危険なことを考えているわけじゃないならまだよかった。そんな安堵も含んでいた。
 綱吉はまた食事に戻った。
 綱吉は忘れているようだが、ビアンキは有能な殺し屋である。彼の表情が意味するところなどすぐ理解した。
(この子、私に殺されかけたこと、忘れてるんじゃない?)
 番茶をずずっとすすって、ビアンキは思った。
(あぁ――でも、私も)
 この子を殺すことなんて、いま、頭になかったわ。
「本当はそんな魚目じゃないくらいの、骸骨にしてやるつもりだったのに」
 ぶ。綱吉が番茶を吹き出した。







08/03/07