<狂い桜>






はらり

一目散に歩んでいく視界。
映り込む薄紅色のカケラ。

「・・・」

雲雀は立ち止まる。
今は秋なのだけれど?


見上げた先、間違いなく咲き誇る桜、桜。

「狂ってる」

狂い桜。

「ばかだね」

人を狂わす桜が。
狂わされている、なんて。


あの病気――サクラクラ病だったかな。

雲雀は孤独な花を見上げて。その眼をすがめる。
懐かしい。
もう完治した筈の症状。

でもまだ。
まだ治らない。



ピピッ

左腕から電子音。
正午を告げる音。


桜から意識が離れる。
約束の場所はもうそこ。

「・・・狂い桜、ね」

視線を巡らせた先。
やわらかい色をした、癖っ毛の少年が見えた。


ふらふら、
クラクラ。

まだ治らない。




僕を狂わせる、君。









実家の近所に秋に咲く桜があるんだってさ、と言う話を元に書いた記憶が。
空月さんに送り付けた後ステキな返歌がやって来て(soratukiページの「さくら」のことですよ)、とってもはしゃぎました。
そして狂い桜なんて言葉は無いことに後から気づいて凹みました・・・狂い咲き、ですよね・・・;;
造語ってことにしておいてください。すみません。
読んで頂きありがとうございました!