春色御題

2008年5月6日〜7月16日


1.凪→猿(ミスフル)
2.サクラ→ナルト(NARUTO)
3.モモカン→三橋(おお振り)
4.クローム→ツナ(REBORN)
5.礼→栄純(ダイヤ)








1.凪→猿



サクラサク





また今年も、十二支には桜が咲きます。ピンク色の花が晴れた空に広がって、とても綺麗です。


「綺麗ですね、凪さんっ♪」
「はい、とても」


猿野さんは私の前でくるり、一度回ってみせてくれました。桜の花びらが風に舞って茶色い髪に乗ります。
綺麗。とても。
猿野さんは桜並木の間を走っていって、振り向きます。


「凪さん!」


真剣な顔で、叫んで。


「はい!」
「頑張ります!俺、今年もあなたのために、頑張ります!」


はい!私も!


春風と桜に乗って、彼に向かって走り出す。





今年もあなたに、私に。


桜咲く。








2.サクラ→ナルト



新作





これが新しい忍術なんだってばよ!どこがすごいってね、まずはこの…


「うん」


へへ、すっげーだろっ?サクラちゃんのために考えたんだってば!


「ありがと」


サクラちゃん、あのねあのね――





長く離れた時間を取り戻すみたいに語られる言葉は、じんわり心に染み込んでゆく。


「サクラちゃん?」
「うん?」
「どうか…したってば?」
「ううん」


首を振る。桜色の髪が揺れる。
私は出来る限り綺麗に、笑おうって思ったの。





「もっと教えて。新しい術!」








3.モモカン→三橋



金平糖





どんどん洗練されていく姿が嬉しい。


輝きを増してゆく姿が愛しい。


人を惹きつける才能が羨ましいような、歯痒いような。





(だけどこれで良かった。あの才能が努力が、埋もれずに済んだもの!)


小さな甘いカケラを、口に含んだ。


私には甘すぎる、なんて思ったけれど、女なのにと思うとなんだか寂しかった。








4.クローム→ツナ



スプモーニ





闇夜のように黒いスーツ。流れる蜂蜜色の髪が光の反射で透明に見えるのは、私が一番知っている。と思う。
柔らかく微笑む唇と瞳が、きれい。


「美味しい?クローム」


にこにこ笑って手のグラスを掲げてみせるボスは、ちょっと子どもっぽくて好き。
グラスの中では濃いオレンジ色が揺れる。


「ええ。美味しいわ」
「そっか!良かったあ」


イタリア生まれのカクテルはボスの頬を紅くするの。
水面を見下ろして、ありがと、って小さくつぶやく。


「どうかした?」
「ううん」


ボスの真似をしてグラスを掲げて。





スプモーニに、乾杯。








5.礼→栄純



薄紅





「そんなに気になる?」


じーっと黒い瞳に見られて、いい気分半分、悪い気分半分。
沢村君は首を横にぶんぶん振って否定するけれど、大体の子は同じように反応するからわかる。
女がここに、野球に陣取るのは不思議なんでしょうね。
わからないでもないけど、でも。


「女をじろじろ見るのは失礼よ。覚えときなさい」
「あっ…すいやせんっ」


勢いよく頭を下げて沢村君は素直に謝る。悪いことと良いことの区別がつくのはいいこと。指導の賜物かしら。
眼鏡のフレームを少し上げ、困ったような彼を真正面から見据える。
恥ずかしそうに俯き気味になった沢村君の頬が赤い。よく見ると唇も。


――可愛い。


目は沢村君に置いたまま、ベンチに置いてあったハンドバッグを漁る。爪に当たった硬い感触を引き寄せる。


「沢村君」
「はいっ!」


元気よく返ってきた声に、口の端を吊り上げて。
腕を伸ばし指先で沢村君の唇を、なぞる。柔らかい、まだ未熟な造りのそれが指先に張り付く錯覚を覚える。


「っ…!?」


黒耀石のような瞳を見開いて後退りかけた彼を、胸を押してベンチに倒す。思ったより簡単にころんと転んで、少しだけ痛そうな表情。
手に持ったものを唇に近づけ、て。





「高島」
「はい」
「あまりそいつで遊ぶな」


監督の声に辺りに視線を散らすと、グラウンドからこちらを射る幾つもの視線。
今は練習試合中でしょうにねえ。
沢村君に視線を戻す。珍しく脅えた顔の彼に、微笑みかけた。
油断したところを頬に手を当て、さっと一線。
たったそれだけなのに、ひかる紅。


「た…高島……せんせい…?」





ルージュの乗った唇が蠢いた光景に、ちら、と欲が浮かんだ。








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サクラサク
新作
金平糖
スプモーニ
薄紅









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