負けた瞬間、というのは本当に何が起こったか良くわからないものである。負けた後しばらくして、だんだん「負けた」という言葉が理解できてきて。自分で小さく音にしてみたところでようやく、手の中にストンと事実が落ちてきた。
試合終了後、わあっという大きな歓声を遠くベンチから見て、宮川は肩の力を抜いた。
西浦に行った三橋は別人のように最初は思ったが、何のことはない昔の三橋のままだった。変わった点は周囲だけ。結果、自分達が悪いということで落ち着いてしまっている。
三星を拒否する三橋はスッキリした顔で西浦と共にいた。どことなく歯痒くてどことなく切ないが、これで解決して、叶も畠も納得したならそれが一番だったんだろう。
夕陽の中、バスに金色の後姿が消えてゆく。宮川はいつの間にか噛んでいた唇を放した。
「ごめん。あと――」
さよなら。
音にした言葉は手の中にストンと落ちて、事実になった。
08,09,14