「お前、どうして山本が今お前のそばにいるのか、わかってんのか?」
呆れたような口ぶりに、それはわかっていないと断定しているのかとツナはイラッとした。当事者であるツナよりリボーンの方がわかっているというのはなんだか悔しい。
「そんなのわかってるよ!それは…」
口を開いた途端、ツナの脳裏に蘇った光景。
校舎の白、彼の髪と目の黒。そして――空の青。
すべてが反転し逆転しくるくる回って落ちていったあの日のこと。
ツナはいつの間にか強く握っていた拳を開きながら、息を吐いた。これはたぶん、リボーンの問いに対する完全なる正しい答えではない。彼が聞いているのはきっかけではなく理由だから。
それでもツナにはその答えしかないように思えた。
「それは…屋上ダイヴが、あったからだ」
一年の始めの頃、山本が屋上から飛び降りたあの事件。結局ツナが死ぬ気になって助けたために、あれは山本によるパフォーマンスということになって事態は収束した。
それ以来山本と本当の意味で仲良くなれたとツナは思っている。不謹慎だし、そもそもあの事故については自分の責任だと思っている節も確かにあったが、あの事件がなければ山本とはこんな風に深い付き合いになるはずがない。
「屋上ダイヴが…あの自殺騒動があったから、山本と俺は仲良くなったんだと思う」
「……」
「あれはきっかけで、理由で…山本と経験した、初めてのことだった」
ツナはぽつり、呟いた。
あれで本当に良かったのかと思うことはよくあった。最近忙しくて忘れていたけれど、思い出してしまうと思考が止まらない。
かちかちと無意味にシャーペンが鳴く。もう一度時計を見ると、三時を超えてもうすぐ半を指そうとしていた。
ツナは大きくため息をつく。
「屋上ダイヴがなかったら、俺と山本が仲良くなるなんて、ありえなかったもんな」
「ほう」