蒼天。その名を冠するに相応しい空が広がる。

「きれいだ」

声に出して賛辞を述べれば微かにその蒼が揺らいだ気がするが、地上の自分が何を言ったところで、何をしたところで空は変わらない。

「山本」

柔らかな声に呼ばれ山本は振り返った。屋上の入り口の前に佇む、ツナの姿。フェンスにもたれた山本からは遠くて小さく見え強風が吹けば飛ばされるのではとすら見える。
けれどツナ特有の存在感はしっかり山本と対峙していて。なんだか嬉しくなるのと同時に、山本はかつての自殺未遂を否応なく思い出した。
澄み切った空気に飛び込むように、ツナが一歩踏み出す。瞬間からだが固くなったのは、何故だろうか?まるで剣士と見合ったときのように。ツナが空気を切り裂いたからだろうか。
そんな山本の心中を露知らず、ツナはあっさり山本に近づいた。



(Dive, in the blue sky!より抜粋)