「…は?」
猿野は先輩相手であるにも関わらず、「何言ってんだこの人?」という感想を隠そうともせず露骨に嫌そうな顔をした。
その目の前にいる二人、キザトラ先輩こと虎鉄と大根先輩こと猪里は、未だかつて見たこともないようなニッコニコの笑顔で猿野を見ている。
「だからYo、いい提案じゃねえKa?」
「猿野は優しい子やからね、選べと言われても選べんこと、知っとるよ」
「はあ…?」
「「だから」」
二人の声がきれいに調和した。全く異なる音程が奏でるハモリは耳に心地良いのだが、いや今はそれどころではなくて、
「俺とは猿野天国として」
「おいとは明美ちゃんとして」
「「付き合おう」」
「……!」
イヤーお二人ともさすがっすね!俺考えもしなかったっすよそんなの。キザトラ先輩とは俺が付き合って大根先輩とはア・タ・シ☆が付き合えば、二兎を追って二兎を得ちゃったみたいなそんな感じですねあっはっはラッキー!
「なんて言うとでも思ったかああああ!?」
十二支高校野球部グラウンドに生首が二つ出現したのは数分後のことであった。
08,09,14