<仲間外れ>
夜中までの馬鹿騒ぎを終えて、一人のんびりと夜道を帰る。明日は、いや今日は、1コマ目が無いから楽勝だ、と一人ごちながら。
随分と濃く深く黒に染まる空と、冷え冷えとする空気が何処か心地良くて、何となく耳に押し込んでいたイヤホンを外した。
外気に触れてひやりと緊張する耳朶、売り切れ点灯だらけの自販機、街灯の切れた暗い道、皓々と明かりの灯った夜騒ぎの続くアパートの部屋。
帰路に見える大学の構内は酷く広く、空虚。点々とある照明は冷たく、白い。
グランドの隅に、物淋しく百葉箱が佇んで。
…なぁ。
此処はとても、空が広い。
少しくすんだ闇は、あそこと同じだけれど、散らばる輝きは全然違う。
…そっちは、どうなんだろうな?
「沢田、」
と。
久しく音にしなかったコトバを、舌に載せる。
暗い暗い、誰も居ない道を歩くのが、好きだ。
その間だけ、騒がしくて、賑やかで、そんなセカイを忘れて。
ひとりの事だけ、考えていられる。
らしくもないそんな考えに、でもある意味俺らしいかも知れない思いに耽りながら、交通量が減ってほとんど意味を成さない赤信号で、立ち止まる。
首に掛けている細い鎖が、皮膚を撫でて冷やす。
…仲間外れじゃ、ないから。
そう言って渡されたリングが、また、胸元で揺れる。
仲間外れだって別に構わない、のに。
同じ事を言った時の、不思議そうな彼の顔を思い出して、くっく、と笑う。
青になった信号。
また歩き出して、上機嫌に鼻歌なんか、歌って。
少し街灯の増えた道、通り越していく車、完全に閉まってる書店。ゆるやかに、角を曲がる。
「…、」
闇夜でも、解る。
丁寧に磨き込まれた黒く光るボンネット。自分には縁遠い高級車が、アパート前に鎮座していた。
「ここの空は、広いですね」
聞き馴れず、けれど聞き慣れた、声が言った。
開かれるドア、アスファルトに響く足音、動けない自分。
闇に溶けず浮き上がる淡い色のスーツ姿。数年ぶりのやわらかな顔が、目の前にあったから。
「迎えに来ましたよ、持田先輩」
待ち侘びて、待ち過ぎた言葉に、泣き笑いの様に頷いて、笑う。
約束、と微笑んだ彼の左手に、仲間外れの証がもうひとつ、光った。
終
補足的言い訳。。。
持田先輩は作者の都合により地方大学に進学しました(ぇ)
多分、ボンゴレ内の勢力争いの類いが片付いたら迎えに行きますとかって約束だったんだと思います。
持綱ラブラブ設定です。
07,9,18
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