文明の利器に頼る恋だなんて! 「うわ、ケータイ圏外だ!」 「でえっ、マジで!?」 「車が山の中過ぎれば元に戻るよ」 「あーならよかったー。ケータイないと俺死んじゃう」 「……三橋?どうした?」 「ふえっ!?」 「縮こまって…気分でも悪いのか?」 「う、ううん!だい、じょぶ!」 「そうか?」 「うん!あり、が、と、阿部くん」 「おう」 ぎゅ、と握った携帯電話。 いま、地球上に必ず存在する彼と自分を結ぶ、唯一の手段。 ――昨日は早く寝たんだよ。いっぱい野球やって、それで、おれ、幸せなんだ、よ! ああ早く、三本のアンテナ、戻ってきて!