高瀬準太と三橋廉の事情
<朝>
決して早起きではない三橋廉の朝は、モーニングコールから始まる。
ぴぴぴぴぴ、と最大音量で携帯が鳴り、役目を果たせなかった目覚まし時計のそばで震える。当然バイブも一番強力にしてある。
「うう〜…んっ…」
眠たげに小さな声を上げ、ベッドの上でもぞもぞ体を動かす。鳴り続ける携帯をぼんやり見てはっとすると、慌てて携帯を開く。画面には『高瀬準太』の文字。通話ボタンを押し、そっと耳元へ。
「もっ…もしもしっ…」
『おはよ。寝坊したな?』
電話の向こうからは独特の低い声。早朝だというのに彼の方は意識もはっきりしている上に、なんだか楽しそうだ。
三橋は恐る恐る時計を見た。5、じ…?
「うわっ…!?」
『ほら急げ急げ』
「きっ、切ります、よ…!」
『うん。またな、三橋』
「は、い!」
三橋は携帯を切り、うひ、と笑った。
準太は必ず名前を呼んでから電話を切る。そんなところが好き。言ったことはないけれど。
彼はもう家を出たのだろうか。寝起きの準太もきっとすごくかっこいいんだろうなあ、とそこまで考えて、三橋は我に帰って真っ赤になる。慌てて服を着替え始めた。
07,9,15
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