LL


 二人は互いに出したものに目をまるくした。
「え…三橋…?」
「ふえっ、あ、あの?そ、その…」
 三橋は大きな瞳を更に大きく見開いて、差し出したものを咄嗟に背中に隠した。泉が出したものが手紙であるということはかろうじて頭の中にあって、けれどそれが何を意味しているのか三橋にはよくわからなかった。だから三橋の頭には、二人同時にまったく同じことをした、という考えがなかったのだ。
 泉は差し出した手紙を見、驚いて固まっている三橋を見、もしかして、と偶然と運命と神様を呪った。
 しかし、一旦引き受けてしまったのだから(それがたとえ半ば強引であったとしても)、最後までやり遂げなければならない。そこまで自分は卑怯ではないから。多分、恐らくは。
「三橋、これさ」
「う、うひっ!?」
 三橋の胸に手紙を押し付ける。
「隣のクラスの女子から。三橋に渡してほしいって」
 三橋は泉の真剣な眼差しを見つめ、恐る恐る手紙を手に取った。
 それからはっとしたように肩を震わせた。泉と自分が同じことをしているのだと、ようやくわかった。
「こっ、ここここ、これっ…!」
 背中に隠していた手紙を泉に渡す。裏返して差出人を見た泉は眉間に皺を寄せた。もしかしたら知らない子だったのかな、と三橋は思ったが、実際は三橋も知らない女の子だったのでフォローのしようがない。
「じゃ、お、おれ……」
「ん?」
「おひ、る!パン、買って、くるねっ!」
「…おー」
 泉の返事を聞くや否や三橋は駈け出した。
 泉は可愛らしい便箋を見つめてため息をつくと、教室へ戻った。





 泉の手紙には、やはりというか何と言うか、ごくごく一般的な愛らしい文字が並び、彼に恋しているのだという美しい言葉が羅列されていた。
 好きだ、と、彼女達はどうしてこんなにも簡単に何かに託せるのだろう。かと言って面と向かって言えるはずもないのだけれど。
 ――ああでもこれ、俺、ものすごく最低だけど…。
『いずみくん、これ――』
 手紙を渡す瞬間の、三橋の顔。もう少し、あと少し赤かったなら。
 まるで三橋からのラブレターだと、泉は苦笑して手紙をしまった。



 三橋の手紙には、初めてなのでこれが普通なのかよくわからなかったが、愛らしい文字が並び、彼に恋しているのだという美しい言葉が羅列されていた。
 好きだ、と、手紙にできる彼女達が羨ましいと三橋は思う。自分にはそんな勇気はとてもじゃないが無いから。
 三橋は手紙を握りしめ、目を瞑った。
『三橋、これさ――』
 手紙を渡す瞬間の、泉の顔。どうしてあんなに優しかったんだろう。
 ふわ、と微笑んで、三橋は手紙を抱きしめた。





「ごめん」
「ごめん、ね」



「「好きな人が、いるんだ」」








匿名の方より、イズミハでお互いがお互いに片想いしてる、ほのぼのしている感じのお話。
最後の二人の台詞は、はにかんだ笑顔でお願いします。
かわいらしいリクエスト、ありがとうございましたv宜しければお持ち帰り下さい。







08,09,27