彼女ができた。なんでもないことのように降谷は言った。
 栄純は前々からその噂は耳にしていたので、へえ、と適当に相槌を打つ。他に仕様もないので。
 惚気話を聞いてやることも、羨ましがって文句を垂れることも、彼女の容姿すら栄純には聞 く気がない。だって栄純はその手の話に非常に疎かったし、仲間内でした経験が無いのだから仕方がないと思った。
 だから短く、そうかよ、と言い、何で俺に言うんだ?と尋ねた。


「……」


 降谷は少し黙ってから、似てて、と小さく素早く言った。


「似てて?」
「うん、君にね。笑うと、少し」
「……ふーん?」


 それが自分に言う理由なのだと、終ぞ栄純はわからなかった。





(彼女ができたんだ)
(君にそっくりだから付き合ってるんだ)
(ねぇ、沢村)





笑ってる顔が君に似ていると思った
 降→→→沢




08,06,08