沢村君沢村君。呼ばれ振り向くと高島と春乃の姿がある。栄純は他の女性陣にするのと同じようににっこり笑った。女の子や女の人はきれいでいいなと思うのだ。なんすか?二人は楽しげに微笑む。やっぱり似合うわよ。やっぱり似合いますよね。意味が分からず首を傾げる栄純を手招き、高島は栄純に耳打ちする。栄純の瞳がまるくなった。え、や…ムリだ!絶対!そんなことないわよ。かわいいから大丈夫。二人は栄純を陰に引っ張っていき、汚いユニフォームを剥いだ。ひぃ、と顔を引きつらせらしくない悲鳴を上げる栄純に無理矢理女物のワンピースを着せる。次の獲物はスパイクで、いつの間にか細いミュールに姿を変えた。に、似合わない…。そんなことないわ!高島は泣きそうな栄純の背中を押し、グラウンドに声をかける。みんなー、見て見てー!振り返った人間の顔が笑顔になったり焦ったり真っ赤になったり。可愛いなあ沢村。御幸の言葉に、降谷は反応しない。他の面々に相手にされて顔を真っ赤にする栄純が、漸く降谷を見た。あ。目が大きく開いて、ふるり、震えた。降谷は目を逸らした。無表情に口が動いた。
「変なの」
栄純は顔を真っ青にして、目をぎゅっと瞑ってきびすを返す。履き慣れないミュールが足を弄ぶ。栄純くん!?沢村!声は届いたが栄純は走り去った。
まったく。
悔しそうに唇を噛む降谷に、御幸は呆れてため息をついた。
華奢なミュールが音を立てた(私の心の悲鳴)
降→←沢+御
08,06,08