marionette×doll
「もしえーじゅんが人形だったらさ、」
鳴はもしもの話をよくする。そういうことに意味がないことを誰より知っているくせに、けれども鳴は口を開き声を出す。
言いたいから言っているのか、言わざるを得ないのか。俺にはわからない。
「もし、そうだったら?」
先を促す。俺が出来るのはそれだけ。
「もしえーじゅんが人形だったら、俺だけに笑うようにしたいな」
「笑う?」
意外だった。他にもそばに置いて離さないでおくとか、めちゃくちゃにしても壊れないとか。我ながらそんな怖い想像もできたのに。
鳴は笑った。どういう種類の笑顔なのか、未だによくわからない。(でもいつかわかる。いつか。)
「そう。例えば、『オイラえーじゅん大好き!』って言うとするだろ?するとさ、にこって笑ってくれるの。それからさ、ちゅーとかするとする。そうしても、にこって笑ってくれるんだ。あと、えっちなこと沢山して、それでもにこって何にもわかってないみたいに笑ってくれんの。それから、」
「鳴」
「うん?」
楽しげに幻想を語る鳴を呼ぶと、彼は小首を傾げた。
「笑う、だけ?」
「そうだよ。だって、人形だからね」
それ以外はしなくていいんだ、とでも言わんばかりに鳴は力強く言った。
じゃあ、と俺は鳴の頬に指で触って、ならどうして?と尋ねた。
鳴は愛しげに愛しげに眼を細めると、俺とまったく同じことをして、だってねえーじゅん、と俺の名を呼んだ。
「えーじゅんが人形じゃなくて良かった、ってオチなんだよ。コレ」
08/10/17