〈すみません〉 「それで、ね」  ふう、とひとつ、大きなため息。 「獄寺くんと山本だけならまだしも、そこになぜか雲雀さんまでやって来て・・・」  表情が暗くなる。 「更にひどいことにそこに骸が現れて・・・っていうか、アイツ何でオレがいる所にことごとく現れるんだか・・・」  がくん、と頭を垂れて。 「で、すっごく幸いなことに、もういろいろヤバそうなところにディーノさんが来てくれたんだけど」 「跳ね馬殿、ですか?」 「そう。ああこれで事態は好転するぞ、って思ったら、ディーノさんまでなんか参戦してきて・・・」  また、ため息。なかなか、次の言葉が出てこない。 「・・・沢田殿争奪戦の火蓋が切って落とされた、と」 「・・・・・・・・・うん」  代わりに言葉を続けると、目の前の少年ははーっと息を吸い込んで、空を見上げながら吐き出した。疲れてい るのだろう、と思った。またはあきれているか。  けれど上を向いたその顔は、少し悲しそうになった。 「沢田殿?」 「あのさ、バジルくん、わかる?」 「なにが、ですか?」 「ええと・・・うーん・・・」  なにやら言いよどんで、視線をあちこちへとめぐらし、最終的にはまっすぐ正面、バジルからだとツナの横顔 が見えるような位置に目を定める。ひざを抱いて、ぽつり、ぽつりと言葉をもらす。 「何で・・・オレみたいなダメツナのこと、みんな好きだって言うんだろう。からかってるのかな?でもさ、そう 聞いたら獄寺くんはひどく傷ついた顔するし、雲雀さんには怒られるし・・・だけど、じゃあ何で、って聞くとね、 みんな明確な返事くれないんだ。あの骸でさえね?・・・・・・そう、みんな、オレはオレだから好きなんだ、って。 それって、ほんとに好きってことなのかな?オレ、京子ちゃんのこと何で好きかって聞かれたら、理由言えるよ。 可愛いし、優しいし、周りのみんなのこと大好きなんだなって、よくわかる。だから、好き。・・・なのにみんなは」 「沢田殿は」  綱吉は顔を上げた。泣いてなどいないのに、バジルにはその顔が、泣き腫らした後のようにすら見えた。 「ああやって沢山の殿方に慕われるのは、お嫌ですか?」 「へっ・・・?いや、お嫌っていうか・・・友達としてなら全然オッケーなんだけど、その」 「・・・・・・」  バジルは、ふ、と照れ笑いのような、苦笑のような笑みを浮かべた。 「すみません」 「え?」  ツナの顔に、その綺麗な大きな瞳に、影がかかる。  その顔を出来るだけ間近で見ていたくて。 唇が触れ合った瞬間も、目を閉じることなく。 「・・・・・・!」  数瞬と経たぬうちに、唇を離す。  ツナは驚きで目を大きく見開き少し口を開いたまま固まっていて、そして過信でなかったのなら、幾ばくか 先程より紅潮して見えた。  そんな彼に、申し訳なさそうな微笑を、バジルは返した。 「すみません、愛してしまって」 おわり あとがき むしろ俺がすみません。(土下座) 書いてませんが(というか書けなかったんですけど・・・)沢田殿争奪戦にはランボやらリボーンやらフゥ太 やら、とにかく他にも沢山参加していたものと思われます。てか定期的に開催して欲しいもんです、争奪戦。 そしてこんな無駄に長くなる予定はなかったハズ・・・!何が起きたんだ!?短いバージョンだと、ツナの 「・・・・・・・・・うん」っていうセリフの後から「・・・なのにみんなは」までが消えます。この方が潔い感じかな ・・・。しつこくなくて。 どうでもいいのですが、途中で言ってたツナの京子ちゃんに対する想いって、実は逆にみんながツナに対し て抱いている想いなんだろうなって思うんです。好きに理屈とか理由とか、そういうのつけるの好きじゃな いので・・・私が(爆)。レイアースの影響です。「理由のある好きなんて本当の好きじゃありませんよ」って いうセリフがあって、私はそれにひどく影響を受けた模様です。 では、読んでいただきありがとうございました!