08:コードレスバンジー(まっさかさまは経験済み)
ん、何やってるかって?
見りゃわかるだろ?自殺の真似事だよ。
そんな胡散臭そうな目で見るなって。事実なんだから。俺そんな頭良くないから、嘘なんて言わねーよ。
悪い冗談?確かにそうだよな。それは至って「そう」だ。俺だって本気じゃないしなー。
でも本当に冗談だって思ってるなら、もっとこっち来いよ。別にお前と心中する気なんてさらさらねーぜ?
お前には興味がない?アハハ、そりゃそうだ!俺だってお前に興味無いもんなあ。
いや、仲良くなりたいとは思ってる。お前いいやつだしな。
ただそれが、普通のありふれた感情でしかなくて、絆とか友情とか名前つけりゃあなんとかなるもんってだけ。だよな?
…なあ、今日は空が広いよなあ。吸い込まれそうって表現があるけど、まさしくって感じ。
話を変えるな?別に変えてねーだろ?
俺らが話してるのは、大事な大事なあたたかい球体の中のもののこと。でも触れたら火傷するって知ってっから、当たり障りないようにその球の表面をかすめるような話し方しかできないんだ。
詩的な表現だよなあ。え、嫌い?お前も人のこと言えないくせにー。
だから、要は空は広く美しく、今日も人はばったばった死んでいってるけど、平和ってこと。
ほら、だからそんな顔すんなって。
……そんなに距離とってんのは、やっぱり考えてるからか?一つの可能性として?
だから飛び降りたりなんてしないのな。かまってくれないボスに業を煮やして、ここでこうしてすっ飛んでくるのを待ってるだけ。
でも、ま、前歴あるからしょうがないっか!
とことんヤな話だけど、これってアイツと俺の約束?ってゆーか、互いに対する罪の意識、なんだな。それで表面上は平気な顔して、ホントのところ根っこの方で鎖にがんじがらめに支配されてる。
バカ?…ああ。そうだな。そう思うよ。
キーワードはいくらでも日常に転がってる。屋上。飛び降り。自殺。怪我。夢の喪失。
助けたい。助けてほしい。助けられない。助けない。そして――
だからそんな怖い顔すんなって!幸せでいてほしいのは俺もいっしょなんだから。
でも、たまにこうしてないと、忘れそうになるんだよ。
何が?ああ、それはな――
――ん。
ほら、来た。
大空の波動、感じるなあ。
怒られるなあ、たぶん。
嬉しそう?ああ、嬉しいな。
こんなとき俺はいつもいつも、ツナに落ちた日のことだけ、考えてるんだよ。
終
山本独白調で10年後。話し相手は獄寺でもリボーンでも誰でもいいと思います。
10年後ボスにかまってもらえないときは屋上に行く山本。みたいな感じです。ツナはきっと心配してきてくれるから。
それはやっちゃいけないって山本も知ってて、でもつい足は階段へ向かい、高い場所へ向かうんでしょう。それはもしかしたら下に落ちるための行為なのではなく、空に近づくための行為なのかもしれないですね。
07,12,8
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